北村英治さんインタビュー
2018年11月16日(金)に神戸国際会館こくさいホールで開催される、アロージャズオーケストラの結成60周年記念コンサートにゲスト出演されるクラリネット奏者の北村英治さん。
アロージャズオーケストラとは長年共演を重ねる間柄である北村さんに、関西のジャズシーンの事や、これからのジャズシーンを担う若いミュージシャンに向けてのアドバイスやアローとのこれまでの関係、そして今回のライブの事をお聞きしてきました。
北村さんから見た関西のジャズシーン
–毎月の大阪での演奏、また神戸ジャズストリートやソネでも毎年演奏されていますが、北村さんから見て、関西のジャズシーンはどのように映っていますか?
けっこう活発だと思いますよ。あと関西はトラディショナルなジャズが多い、オーソドックスな味を持っているし、神戸では特にそれを感じる。そこがいいなぁと思います。
–北村さんのライブは演奏だけでなく、MCも含めてとても楽しいですが、ライブの際に何か心がけていらっしゃる事はありますか。
ジャズはたしかに芸術の一つなんだけど、芸術家になろうとしたらダメなんだよね。
何百人に一人はいるけどね、芸術家として認められる人も。それよりもお客さんと楽しむ時間、そしてどうやったらお客さんに喜んでもらえるかを考える事の方が大事なんじゃないかな。
自分の表現なんて、たかが知れているわけです。自分を全面に出し過ぎると音楽が首を傾げるようになっちゃう事がある。自分の携わる音楽を大事に表現する事、でもそれを大事にしない若い人も時折見かけます。俺はこういうのができるんだ!っていうのばっかりしていると鼻についちゃって、どうしようもないでしょ(笑)!?だから音楽に対して常に謙虚であるべきだと思う。自分は音楽をやらしてもらっているんだっていう気持ちが大事なんじゃないかな。そういう心持ちで演奏すると良い表現ができるし、言葉の壁があっても、世界各国で受け入れてくれる。
–音楽という字が表しているように、まさに音を楽しむ気持ちが大事ですよね。
どうだ、このテクニック!って見せる人がいるけど、それは単にテクニックの問題であって、音楽の問題じゃないんだよね。僕は音楽として捉えたい。あぁ楽しい音を出しているなぁって。すごいことやる人より、心に残る事をやる人の方に価値があると思うし、それを目指していきたいなぁ(笑)。
–北村さんのようなキャリアがある方でも、そう思っていらっしゃるのですね。
謙虚じゃないって。自分ではまだ育っていると思っているから(笑)。
俺はすごいだろう!という気持ちはまったく持ってない。学生の時と同じ気持ちで演奏しています。
若いミュージシャン達へのアドバイス
–ここ数年、神戸では中高生のジャズ演奏者も増えてきましたし、神戸でもユースジャズオーケストラを結成し、若くしてジャズを演奏する人がまた増えてきました。
そういった若い世代へのアドバイスをいただけないでしょうか。
難しく考えない方がいいんじゃないかな。音楽にドップリ浸っていけばいい、それが一番大事。それとどんな楽器でも最低限の練習はしなきゃいけない。その人によって、何が最低限か違いはあるけどお稽古は絶対必要だと思う。私も今でも楽器に携わる時間は長く欲しいな。楽器は自分を表現してくれるものだから。練習は楽しいしね!練習が苦手って言う人はね、さぼりたい気持ちの逃げ口上に過ぎないと思います(笑)。
練習して、できなかったことができるようになる、こんないい事、嬉しい事はないんだから。自分はこれだけの表現ができるんだ!って得意になる人はプロにはいないよね。だって、それはどこに上限があるかわからないわけだから。どこの国へ行っても、どんな種類の音楽をしているプロと呼ばれる人は皆練習をしっかりやっているもん。
アロージャズオーケストラについて、そして11月のライブへの想い
–アロージャズオーケストラとのこれまでの関係は?
思い出って言ってもねぇ、北野タダオさんがクラブアローに出ている時から長い付き合いしているんでね(笑)。
アロージャズオーケストラとは鳥取県の日南町ミュージックキャンプで10年間一緒に指導していました。日本全国からアマチュアのプレイヤーが老若男女集まって指導するんですけど、そこには現在共にジャズピアニストして活躍している松本茜さんや松永貴志さんも来ていましたよ。アロージャズオーケストラとは、そのキャンプで関係がより深くなったね。
–プロのビッグバンドは関西でも珍しい存在です。全国的に見ても少ないですよね。
これまでの継続は大変だったと思う。北野さんもよく頑張っていたし、マネージャーの西田さんの強力なプロモートの賜物だね。
–アロージャズオーケストラの特色はどういう所でしょうか。
みんな名手!名プレイヤーばかり、半端な奴はいないから、アローには。
昔からのメンバー、トロンボーンの宗清洋も一時期東京でもシャープス&フラッツ等で活躍したけど、また関西に戻って今もアローのリーダー的存在で頑張っているよね。
-11月のライブに向けてメッセージを。
一生懸命やるだけ!そして贅沢なゲストにも注目してほしいね。
(2018年9月20日木曜日 帝国ホテル大阪にて)
インタビュー・文
小島良太(ジャズライター、ジャズフリーペーパーVOYAGE編集長)