神戸とJAZZの歴史

小島良太

〈レジェンドの名作を楽しもう その3〉

関西のジャズを語る上で、この方を語らないわけにはいきません。

そう、その方こそベーシストの宮本直介さんです。

現在も現役で活躍され、大塚善章さん、鍋島直昶さんとのゴールデンシニアトリオでは

世界最高齢バンドとしてギネス認定されたのを記憶されている方は多いのではないでしょうか。

ベーシストとしての活躍はもちろん、大阪へのブルーノート招致や、

ディジー・ギレスピーの来日公演を実現させるなど、イベントプロデューサーとしても

八面六腑の活躍をされ、関西のジャズシーンの隆盛に貢献されてきました。

そんな宮本さんの若かりし頃の記念すべき初リーダー作が今回紹介する作品、

「STEP」です。

 

宮本直介「STEP」(1973年録音 CD:THCD-252

一時期上京され、名ドラマーであるジョージ川口さん率いる「ビッグ4」にも参加し、

活躍された宮本さん。家業のために関西に戻られてからも精力的に活動されたのは

言うまでもありませんが、当時満を持して発表されたのが本作です。

以前このコラムでも紹介した古谷充さん(アルトサックス)が参加、また現在の「なにわジャズ大賞」のルーツである「中山正治ジャズ大賞」に名を残した関西屈指の名ドラマーとして語り継がれる中山正治さんは甲南大卒で芦屋市出身、古谷さんと共にサックスで参加の後藤剛さんは神戸市出身、リーダーの宮本さんも西宮市出身と兵庫、神戸に縁のあるメンバー構成。

管楽器隊が勢い良く飛び出すと共に宮本さんの地を這うような力強いベースプレイに

圧倒される“Step Right To The Bottom”、渡米も経験され、本場でジョン・コルトレーンの洗礼を浴びた後藤さん作曲の“One For Trane”等、関西の当時のジャズシーンの熱い息吹が伝わってくる熱演が収録されています。

名奏者であることは間違いありませんが一般的な知名度は決して高いとは言えない、

サックス奏者のハロルド・ランドの曲を5曲中2曲取り上げているのも注目すべき点でしょう。また、ジャズの醍醐味である“Blues”で各メンバーが伸び伸びとソロを取って、最後を締めくくる構成も魅力的。ピアノの米田正義さんとトランペットの信貴勲次さんの演奏も聴き逃せません。

宮本さんが当時から見せていたリーダーシップは現在も健在。

今、関西のジャズシーンを沸かすミュージシャンにも宮本さんから多くの事を学んだとおっしゃる方が多数いらっしゃいます。

まさに“ボス”の風格を漂わせる宮本さんの説得力あるベースサウンド、この作品はもちろんですが、是非リアルな現場で体感してください。

 

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