「ジャズ喫茶は日本固有のジャズ文化」
1962年に「アートブレーキ―とジャズメッセンジャーズ」が来日して、全国的なジャズブームが起こり、アメリカの主要なミュージシャンが続々と来日、渡邊貞夫や日野皓正といった日本人のジャズメンも台頭してきました。ラジオ放送の分野では、FM試験放送が始まり、音質が良いのが売りで音楽番組中心。ジャズ専門の番組もいくつかありました。
そのころですが、日本全国いたるところにジャズ喫茶が出来てきました。主要な都市には数軒のジャズ喫茶があり、神戸市内にも6,7軒はありました。
大体は、千枚程度のレコードを揃えて、高級オーディオでガンガン鳴ったジャズを聴かせてくれる、飲物は珈琲主体、聴くことが主なので私語禁止、読書はオーケーですが音の出る新聞禁止。聴きたい曲のリクエストは受け付けてくれました。今から思うと不思議な場所ですね。当時、レコードは2,500円位していて高価で買えず、ジャズを聴くにはジャズ喫茶しかなかったんです。こんな、ジャズ喫茶は世界中でも日本だけのようです。まさしく「日本固有のジャズ文化」。
最も古いジャズ喫茶は、横浜の「ちぐさ」で、1933年の創業です。神戸でも1932年に川崎町で「ジャズ」という喫茶店がオープンしていますが、こちらは2、3年で店を閉めたそうです。その後、1950年代の中ごろから全国にジャズ喫茶ができていくのですが、神戸の「JAVA」は比較的早く、1953年の開業です。今でも、三宮の高架下で営業を続けています。開店直後には、鳴尾の米軍キャンプで唄っていた江利チエミも何度か店を訪れていました。その後、「さりげなく」「木馬」「トンボ」などが開店。兵庫県内をみても、いくつかあって、ジャズ喫茶のマッチ箱コレクターも随分といました。
1953年開業のジャズ喫茶「JAVA」。現在も三宮高架下で営業しています。
1970年代の後半頃から、ジャズ喫茶もなくなっていきました。現在でもジャズを売りにして営業を続けているところはありますが、アルコール主体としたり、食事を提供したりと、喫茶店としての場はなくなりました。珈琲一杯で何時間も居座られるのは、経営的に成り立たないんでしょうね。それと ビートルズが、出てきたりしてジャズが特別にハイカラな音楽ではなくなったのかもしれません。
従来のジャズ喫茶に最も近い形で営業している、神戸・元町のジャズ喫茶「JAM JAM」
今では、蕎麦屋や居酒屋でもジャズが鳴るようになって、ジャズをジャズとして意識しないで身近なものになったのだ、とすれば、嬉しい限りなんですがね。
(ポータルサイト「ジャズの街~神戸」元編集長 安田英俊)
「おとな旅神戸」では、ジャズ喫茶巡りを実施しました。(2017.11.JAVAにて)